2025-02-15 05:53:00
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蒼生大和の調理場。
そこに、夢依の小さな姿があった。普段は生意気でメスガキたっぷりに振る舞う彼女だが、今は表情がまるで別人のように引き締まっている。
「……絶対に成功させるんだから…」
凛とした声で、夢依は自分に言い聞かせるように呟いた。
目の前には材料がずらりと並んでいる。上質なカカオ、天然の蜂蜜、体に優しいナッツやドライフルーツ。それに、栄養価の高いスーパーフードまで揃えてある。
夢依は一つ一つを丁寧に見つめ、手に取り、香りを確かめた。目の奥には強い決意が宿っている。
「あるじさま、いつも激務だもんね。戦いに出て、みんなを守って……すごく疲れてるはず…」
普段、彼の前では見せない優しさが、今はその表情に浮かんでいる。
「……少しでも元気になってもらえるように、甘くて、でも栄養たっぷりのチョコレートを作らなくちゃ」
夢依はまず、カカオを細かく刻み始めた。
包丁を握る手はしっかりとしていて、リズミカルに刻む音が調理場に響く。普段のメスガキらしさは微塵もなく、その動きは実に手際が良い。まるで職人のようだ。
「これくらい細かくすれば、口当たりもなめらかになる……うん、悪くない!」
少しだけ満足そうに微笑むが、すぐに気を引き締め直し、次の作業に移る。
刻んだカカオをボウルに入れ、湯煎にかけてゆっくりと溶かす。
「焦らず、じっくり…温度が大事なんだから…」
カカオが滑らかな液体になるまで、夢依はひとときも目を離さずに慎重にかき混ぜた。
「手、抜けないね…」
自然と体に熱がともる。それでも集中を途切れさせることなく、彼女は一生懸命にチョコレートを作り続けた。
溶かしたカカオに、天然の蜂蜜を少しずつ加える。甘さ控えめで、でもほんのり優しい味わいになるように、分量を何度も調整する。
「……うん。これなら甘すぎない。体にも優しい…疲れた体に染み渡るはず」
次に、栄養価の高いナッツやドライフルーツを丁寧に刻み、チョコレートに混ぜ込んだ。
「……これで栄養もばっちり。いつも頑張ってるあるじさまに、元気を届けられる」
型に流し込んだチョコレートを、そっと冷蔵庫に入れて固める。
その瞬間、夢依は大きく息を吐き、肩の力を抜いた。
「ふぅ……」
いつもの生意気でやんちゃな姿はどこにもなく、そこには純粋に誰かを想い、一生懸命に努力する少女の姿があった。
「……喜んでくれるかな…」
ぽつりと呟きながら、夢依は小さく微笑んだ。
元気になってもらいたい。ただそれだけの気持ちが、夢依の心を温かくしていた。
「絶対に、元気にしてみせるんだから……」
彼女の決意は、誰にも負けないほど強いものだった。
そして、そのチョコレートには、夢依のまっすぐな想いがたっぷりと詰まっているのだった。